アメリカの科学雑誌“サインエンス”にて、
人は何のために睡眠をするのかを証明する新たな見解が発表され、話題となっております。
睡眠の役割についての新しい仮説が検証
その見解とは、
“睡眠とはその日の昼間にあった出来事の一部を忘れるためである”というものです。
内容は
脳内の神経細胞間“シナプス”に関するもの。
結果、将来的には睡眠に関する分子を的確に標的とした(計算した)上で睡眠治療が行える可能性があると述べられております。
脳のことがだいぶ解明されてきたということです。
私自身、脳については医療現場で密接に関わっておりますので、大切なことかと思われます。
2003年にウィスコンシン大学のグループの仮説を出しました。
シナプスホメオスタシス仮説
「睡眠中にシナプスの結合数が減少する」
昼間の経験により、結合され過ぎたノイズを減らすためということです。
シナプスとは...
160億のニューロン(脳細胞)があり、
ニューロン毎に数千のシナプス(接合)があります。
つまり、100兆のシナプス(結合)が脳の中にはあると言われております。
このシナプスの結合が、いわゆる“学習”になっております。
それを踏まえて、上記に述べた仮説が検証されました。
2本の検証論文が発表
ウィスコンシン大学にて
“実際、睡眠中にシナプス結合レベルが下がっている”
ジョンズポプキンス大学にて
“睡眠中にシナプス結合を弱めるタンパク質Homer1Aを特定”
という2本の検証論文が今月に入りまして発表されました。
実際に、ジョンズポプキンス大学ではマウスによる実験が行われました。
内容として
・マウスを入れるヘアに電気ショックがある場所があり、
そこを通ると電気ショックを受ける。
・Homer1Aを働かなくしたグループと通常グループを部屋に入れ、
その後一晩睡眠させる。
検証結果は
・前の晩に電気ショックを与えた部屋に入れると、
両グループともフリーズする。
・別の部屋に入れると、
Homer1Aが働かないマウスグループのみフリーズする。
以上の検証結果から分かることは
Homer1Aが働かないグループは結合が強すぎるということです。
シナプスホメオスタシス仮説からわかること
これらの検証から分かることは...
睡眠には、昼間の経験による学習を適度に忘却させた上で、定着させる効果があるということです。
そして、Homer1Aの働きは自然な睡眠であり、
睡眠薬では“眠れない理由が忘れられなくなる”リスクがあるということです。
つまり、睡眠薬を飲んで忘れようとすることは、逆効果ということです。
“睡眠剥奪がトラウマ記憶定着を防げる”という研究結果と合わせた
“望ましい睡眠法”と言えます。
まとめ
通常は睡眠薬を使わずに昼間太陽にあたり、自然なメラトニンサイクルを行うことです。これがHomer1Aの睡眠をしっかり行うことになります。
これも当たり前ですが、寝る前のスマホはメラトニンを減少させてしまうので良くありません。カフェインやアルコールも同様です。
その上で、日常的ではない大きなトラウマ体験をしたときは、その晩は逆に眠らず記憶に定着させないようにすると効果的だそうです。